天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜

「退け、この蜜は我らのものだ!」
「先にいたのは私たちだ、引け!」


アシナガバチとドロバチの兵士たちが
宙で睨み合っている。
毒に染まった槍をちらつかせ、一触即発の火花を散らして――

カミリアは息をのんだ。


「あの、やさしいアシナガバチさんが……?」


思い出す、フロライアですれ違った彼女たち。
普段は大人しく、美脚を揺らしながら
柔和に微笑んでいた。

今の彼女たちは、優雅さを脱ぎ捨て、
獣のような気を放っていた。


「この時期は、どの王国も神経質になります」


ルーラがそっと耳打ちする。


「食糧不足なうえ、越冬(えっとう)の備えで……
みんな、生き残るのに必死なんです」


カミリアは無言でうなずく。
その視界の隅、ふとあるものを捉えた。


(――空っぽの巣だわ……!)




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