天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
コロコロコロ……スイッチョン……
川辺の草むら、秋の虫の愛の合唱が伴奏のように響く。
そのなかで、夜空に浮かぶラブレターのように、ホタルたちは命の灯をゆらゆらと揺らしている。
ホタルの男たちが、ひとすじの想いを
込めて光をまたたかせる。
「アカリちゃん……この光、どうか、君だけに見てほしい」
その囁きに応えるように、地で待っていたホタルの女がそっと光り返す。
「見ているわ。来て、ヒカルさん……」
光で交わす、愛の詞。
二つの光が寄り添い、やがてふたりはそっと交わる。
消えゆくともしびが、ぬくもりを分け合うように。
「……ホタルさんって、不思議です」
カミリアがぽつりと呟いた。
「光は、ひとつひとつ違うんです。ひとりずつ、自分だけの光を持ってるんですよ」