天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
アザレオは微かに苦く笑う。
「……無茶を言うな。夜の外気は冷える。翅が凍てつくぞ」
「私が、陛下をあたためます。
……フロライアの蜂は、寒さに強いように進化しているんです」
差し出された小さな手はあたたかく、
甘い蜜に触れるようで……
そこだけ、春のような温もりが広がっていく。
「……おまえは、本当に」
「すぐ戻ります。だから、少しだけ……ね?」
迷ったように目を伏せたアザレオは、
しぶしぶ――
けれど、少し嬉しそうに頷いた。
「……少しだけだ」