MYSTIQUE
 不況であっても、たまにはいいだろうと言わんばかりに浮かれた人々で賑わう週末の歓楽街。
 その中でも、特に呑気なのは大学生たちだ。彼らは、親の脛をかじって暮らしているので、バイト代は全部自分の小遣いになる。下手な社会人よりいい暮らしだ。
「全く⋯⋯なんで男ばっかりで呑まないといけないかねぇ」
「そりゃあ、俺たちは勉強しか取り柄のないオタクだから⋯⋯って、言わせんな!」
「お前ら、うるさい」
 国立工業大学のオタク系男子グループの中、一人だけ明らかに雰囲気の違う青年が冷静に言う。
「なんだよぉ。お前はいいよな。ツラはいいし、ボンボンだし。うちの大学の校風に合ってないっ!」
「飲む前から絡んでくるな」
 ツラのいいボンボンだと言われたその美青年は、ふと一点を見つめて立ち止まった。
 立ち止まったかと思いきや、仲間たちから離れてゆく。
「おいおい、何処行くんだよ?」
「悪い。先に行っててくれ」
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