竜王の歌姫
溢れ出す瘴気
休憩中のギルバートとのひと時。それがルーシーに露呈したことにより、カノンは暴行を受けた。
しかしすぐに医務室に運ばれ、適切な治療を受けたことにより、跡になるような傷跡が残ることはなかった。
赤く腫れた頬、腹や背中の痣。
そんな暴行の痕跡が薄れかけた頃のことだった。
王城の渡り廊下で、カノンは向かいから見覚えのある男たちが歩いてくることに気がついた。
それは複数の神官。そこにはイルマの姿もあった。
「おや、カノンさん。お久しぶりです」
カノンの存在に気づいたイルマが声をかけてくる。
イルマは神殿からの使者の1人としてやって来たようだった。
カノンもお辞儀を返す。
イルマたちの纏う神官服。
見慣れていたはずのそれが、随分久しぶりに思えた。
「お元気そうで何よりです」
イルマの様子は、神殿にいた頃と変わらない。
いつも通りの穏やかな笑みを浮かべている。
「ああそうだ、カノンさんは花はお好きですか?」
(……花? どうして急に……)
唐突な質問に、疑問符を浮かべるカノン。
「近いうちにきっと、面白いものが見られますよ」
カノンに向けるその笑みは、いつもと変わらないはずなのに。
何故か背筋がゾクッと寒くなるような感覚。
「それでは」
言葉に表せない違和感を覚えながら、カノンは去っていくイルマの後ろ姿を見つめることしかできなかった。
しかしすぐに医務室に運ばれ、適切な治療を受けたことにより、跡になるような傷跡が残ることはなかった。
赤く腫れた頬、腹や背中の痣。
そんな暴行の痕跡が薄れかけた頃のことだった。
王城の渡り廊下で、カノンは向かいから見覚えのある男たちが歩いてくることに気がついた。
それは複数の神官。そこにはイルマの姿もあった。
「おや、カノンさん。お久しぶりです」
カノンの存在に気づいたイルマが声をかけてくる。
イルマは神殿からの使者の1人としてやって来たようだった。
カノンもお辞儀を返す。
イルマたちの纏う神官服。
見慣れていたはずのそれが、随分久しぶりに思えた。
「お元気そうで何よりです」
イルマの様子は、神殿にいた頃と変わらない。
いつも通りの穏やかな笑みを浮かべている。
「ああそうだ、カノンさんは花はお好きですか?」
(……花? どうして急に……)
唐突な質問に、疑問符を浮かべるカノン。
「近いうちにきっと、面白いものが見られますよ」
カノンに向けるその笑みは、いつもと変わらないはずなのに。
何故か背筋がゾクッと寒くなるような感覚。
「それでは」
言葉に表せない違和感を覚えながら、カノンは去っていくイルマの後ろ姿を見つめることしかできなかった。