竜王の歌姫

side:ルーシー

ルーシーは、暇つぶしがてら騎士団の訓練を見に来ていた。
剣を交える男たちを眺めながら、ルーシーはため息を吐く。

(はあ、退屈ね……)


問題を起こしたばかりの後にも関わらず、カノンに暴力を振るうという新しい問題を起こしたせいで、ルーシーは反省の色なしということで再び謹慎させられる羽目になっていた。

今は、やっとその謹慎が終わったところだ。

謹慎中は、ギルバートとも会えなかった。

本当は、カノンと密会していたのはどういうことだとギルバートにも問い詰めたかったのに。

しかしまた謹慎中に抜け出されてはたまらないと、部屋の見張りは最初から厳重体制で、部屋で大人しくしている他なかった。

もしかしたら、ギルバートが会いに来てくれるかもしれない。
しかしそんなことは一度もなく、期待は無駄に終わった。

やっと謹慎が終わったと思えば、ギルバートは視察で留守だという始末。

(ギル様……)

私を歌姫にすると、そう言ってくれたはずなのに。
まだ歌姫認定の儀の日取りさえ決まっていないのはどういうことなの?

思えば近頃のギルバートには、冷たい眼差ししか向けられていない。

(あの女とは、コソコソ密会なんてするくせに……)

カノンの顔が浮かび、より一層苛ついた。

(それにしても……)

騎士団の中にも、中々見目のいい男たちが揃っている。

遊び相手くらいにならしてあげてもいいかな。
そんな気持ちで、ルーシーは男たちの品定めを始める。
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