竜王の歌姫
「カノン、調子はどうだ?」

「ギルバート様。
はい、先ほど授業が終わったところで……今日も色々と教えていただきました」

ギルバートは公務の合間を縫って、毎日のようにカノンに会いに訪れた。

授業が終わった後の休み時間にも、本を開いて教わったところの反復を行っていたカノンは、
ギルバートの来訪に気づくと立ち上がった。

「そうか。
頑張るのはいいが、あまり無理はしないように」

「ありがとうございます。
でも、はじめて知ることがたくさんあって……学ぶことが楽しいんです」

「……そうか」

嬉しそうに言うカノンを、慈愛のこもった瞳で見つめるギルバート。

自分が歌姫の立場になったことは、まだいまいち実感が湧かないし、それを驕るつもりもない。
でも、こうして堂々とギルバートと話すことができるようになったことが、何より嬉しかった。

「……そろそろ戻るかな」

「あ、はい……いつもお忙しい中、ありがとうございます。
また後ほど……」

しかし公務に戻るはずのギルバートは、中々足を進めようとしない。

「ギルバート様……?」

「……このまま連れて帰りたい」

「……え?」

名残惜しそうにカノンを見つめ、心の声を漏らしたりして。

「ギルバート様、お気持ちは分かりますがそろそろお戻りください。
公務が溜まっております」

そのうちに、痺れを切らしてやってきたミドルによって連れ戻されていった。
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