竜王の歌姫
幸福を実感するからこそ、頭に浮かぶ1つの気掛かり。

(……ルーシー……)

千ノ花の後遺症により、老婆のような外見になったルーシー。
巻き込まれて、同じく老婆のような外見になったアリサとユウミ。

3人の外見は、終ぞ元に戻らないままだった。

アリサとユウミは、カノンが新たな歌姫となったことを知って
「自分をそばに置いてくれ」「こんな姿になって可哀想だと思うでしょう」と擦り寄って鞍替えしようとした。
しかしこれまでのことを思えば、カノンがそれを受け入るはずもなかった。

結局2人は、神殿に返されることとなった。
とはいえ不名誉な形での出戻りとなれば、神殿でもきっとろくな扱いを受けないだろう。

ルーシーは千ノ花の正確な効果を知らなかった。
使用者の末路を知っていれば、こんなことは起きなかったかもしれない。
とはいえ国を危機に陥れた罪は重く、ルーシーは地下牢に収監された。

養子となっていた竜人貴族からは除籍され、何の後ろ盾もなくなった。

辛うじて死刑は免れたものの、この先牢屋の外に出ることは叶わないだろう。
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