竜王の歌姫
カノンは大量の薪を抱えながら、神殿内を歩いていた。
当然のようにカノンを手伝う人はいない。
それどころか、向かいから歩いてきた女たちのうち一人が、カノンの足元にさっと爪先を出す。
「……っ……」
手元が塞がれているカノンはそれに気づかず、足を引っ掛けてその場に倒れ込んでしまった。
持っていた薪が地面にばら撒かれる。
「あははっドンくさーい」
「ちゃんとそれ拾いなさいよね」
カノンのことをニヤニヤと意地悪く見下ろした後、女たちは笑いながら去っていった。
カノンは1人、しゃがみ込んで散らばった薪を拾い集める。
いつものこと。そう思ったって、痛みを感じない訳じゃない。
「大丈夫ですか?」
そんなカノンにかけられた声。
顔を上げると、そこには神官の男・イルマが立っていた。
「手伝いますよ」
イルマはそう言ってしゃがみ込むと、手早く散らばった薪を拾い集める。
カノンはそんなイルマのことを見つめる。
この神殿にはカノンたち少女の他に、神官と呼ばれる聖職者の男たちが属している。
神官長をトップとして、神殿内や乙女の選抜・管理まで幅広い役目を担う者たちだ。
そんな神官たちだって、ルーシーの反感を買うことを恐れ、カノンに構う者は殆どいない。
しかしこのイルマだけは、こうやってカノンを気遣う素振りを見せることがあるのだった。
当然のようにカノンを手伝う人はいない。
それどころか、向かいから歩いてきた女たちのうち一人が、カノンの足元にさっと爪先を出す。
「……っ……」
手元が塞がれているカノンはそれに気づかず、足を引っ掛けてその場に倒れ込んでしまった。
持っていた薪が地面にばら撒かれる。
「あははっドンくさーい」
「ちゃんとそれ拾いなさいよね」
カノンのことをニヤニヤと意地悪く見下ろした後、女たちは笑いながら去っていった。
カノンは1人、しゃがみ込んで散らばった薪を拾い集める。
いつものこと。そう思ったって、痛みを感じない訳じゃない。
「大丈夫ですか?」
そんなカノンにかけられた声。
顔を上げると、そこには神官の男・イルマが立っていた。
「手伝いますよ」
イルマはそう言ってしゃがみ込むと、手早く散らばった薪を拾い集める。
カノンはそんなイルマのことを見つめる。
この神殿にはカノンたち少女の他に、神官と呼ばれる聖職者の男たちが属している。
神官長をトップとして、神殿内や乙女の選抜・管理まで幅広い役目を担う者たちだ。
そんな神官たちだって、ルーシーの反感を買うことを恐れ、カノンに構う者は殆どいない。
しかしこのイルマだけは、こうやってカノンを気遣う素振りを見せることがあるのだった。