竜王の歌姫
高く透き通って、空まで伸びていくようなルーシーの歌声。
それに触発されて思う。
私ももう一度……昔のように、あの夢の中のように、歌えたなら―――
吸い込んだ息は、虚しく喉から掠れ出るのみだった。
ルーシーの歌声が聞こえなくなると、今度は一瞬の間を置いて湧き起こる歓声。
カノンは俯いて、汚れた手のひらを握りしめた。
―――やっぱり、歌えない。歌っては駄目なんだ。
そんな時、誰かの足音と近づく気配。
ハッと顔をあげて、目の前に現れた人物と視線が重なった。
その瞬間、心臓がドクンと脈打った。
薄暗闇の中、目の前のその人が目を見開いたのが分かる。
「なあ、君は―――歌うのか?」
思わずと言ったように、問いかけられたその言葉。
反射的に、カノンは首を横に振った。
現れたのは、1人の男だった。その顔に見覚えはない。
けれどその人は一目見て分かるくらいに、整った顔をしていた。
身にまとう衣服からして、とても高貴な身分、つまりは竜人だ。
どうして……?
知らない人のはずなのに、胸がざわめく。
そんな感覚にカノンは戸惑う。
それに触発されて思う。
私ももう一度……昔のように、あの夢の中のように、歌えたなら―――
吸い込んだ息は、虚しく喉から掠れ出るのみだった。
ルーシーの歌声が聞こえなくなると、今度は一瞬の間を置いて湧き起こる歓声。
カノンは俯いて、汚れた手のひらを握りしめた。
―――やっぱり、歌えない。歌っては駄目なんだ。
そんな時、誰かの足音と近づく気配。
ハッと顔をあげて、目の前に現れた人物と視線が重なった。
その瞬間、心臓がドクンと脈打った。
薄暗闇の中、目の前のその人が目を見開いたのが分かる。
「なあ、君は―――歌うのか?」
思わずと言ったように、問いかけられたその言葉。
反射的に、カノンは首を横に振った。
現れたのは、1人の男だった。その顔に見覚えはない。
けれどその人は一目見て分かるくらいに、整った顔をしていた。
身にまとう衣服からして、とても高貴な身分、つまりは竜人だ。
どうして……?
知らない人のはずなのに、胸がざわめく。
そんな感覚にカノンは戸惑う。