竜王の歌姫
「どうかそろそろお戻りください。
その、歌姫様を誤魔化すのももう限界のようで……」
そう言いながら、騎士の男はカノンにちらりと視線を向けた。
カノンは慌ててお辞儀をする。
「分かった。戻るよ」
顔を上げたカノンと、ギルバートの目があった。
「君はパーティには参加していないようだな。
……一緒に来るか?」
今夜は皆が華やかに着飾る中、カノンは仕事着のメイド服のまま。
そんな姿を不憫に思ったのだろうか、そんなギルバートからの提案。
カノンは首を横に振る。
ギルバートと共にパーティ会場に行くなんて、とても恐れ多いことだった。
それに、ルーシーに見られたら後で何をされるか分かったものではない。
探し物も見つかったのだから、大人しく部屋にでも戻ろう。
「そうか。なら、これ以上暗くならないうちに帰るといい」
2人の視線が重なる。
その金色の瞳と見つめ合うと、
「離れたくない」
カノンの中に、何故だかそんな感情が沸き上がる。
相対するギルバートは何かを言いかけるみたいに口を開いて、けれど言葉にはならなかった。
「ギルバート様……」
「……ああ、分かってる」
騎士の男の催促に頷いて、ギルバートはもう一度カノンを見る。
「慣れない環境で大変だろうが、これからもよろしく頼むよ」
そう言い残して、ギルバートは騎士の男と共に去っていった。
カノンは深々と頭を下げたまま、小さくなるその背中を見送った。
その、歌姫様を誤魔化すのももう限界のようで……」
そう言いながら、騎士の男はカノンにちらりと視線を向けた。
カノンは慌ててお辞儀をする。
「分かった。戻るよ」
顔を上げたカノンと、ギルバートの目があった。
「君はパーティには参加していないようだな。
……一緒に来るか?」
今夜は皆が華やかに着飾る中、カノンは仕事着のメイド服のまま。
そんな姿を不憫に思ったのだろうか、そんなギルバートからの提案。
カノンは首を横に振る。
ギルバートと共にパーティ会場に行くなんて、とても恐れ多いことだった。
それに、ルーシーに見られたら後で何をされるか分かったものではない。
探し物も見つかったのだから、大人しく部屋にでも戻ろう。
「そうか。なら、これ以上暗くならないうちに帰るといい」
2人の視線が重なる。
その金色の瞳と見つめ合うと、
「離れたくない」
カノンの中に、何故だかそんな感情が沸き上がる。
相対するギルバートは何かを言いかけるみたいに口を開いて、けれど言葉にはならなかった。
「ギルバート様……」
「……ああ、分かってる」
騎士の男の催促に頷いて、ギルバートはもう一度カノンを見る。
「慣れない環境で大変だろうが、これからもよろしく頼むよ」
そう言い残して、ギルバートは騎士の男と共に去っていった。
カノンは深々と頭を下げたまま、小さくなるその背中を見送った。