竜王の歌姫

side:ルーシー

―――想像以上。

それが、この国の王となる男・ギルバートと初対面した感想だった。

竜人は、男女を問わず美しい容姿を持つことが多い。
そしてその中でも、別格に美しいと噂されていたのがギルバート。

「この男が欲しい」
ルーシーは一目でそう思った。

そしてそれは、叶うはずなのだ。
だってルーシーは、ただ1人選ばれた―――竜王の歌姫なのだから。


今夜は、ルーシー(歌姫)をお披露目するためのパーティが開かれている。
国一番の職人が手がけた最高級のドレスを身にまとったルーシーは、この場の誰よりも美しく輝いているという自負があった。

「ギルバート様……どうでしょうか?」

「……ああ。美しいドレスだ」

しかしギルバートは、飾り立てたルーシーの姿を見ても態度を変えることはなかった。
その口から出たのはまるでドレスの美しさのみを褒めるような言葉のみ。
ギルバートからの求めていた言葉がないことが不満だった。

しかし、ルーシーと同様に最高級品で着飾ったギルバートは、より美しく輝きを放つようで。
その男と並び立ち、そして会場中の視線を集めることでルーシーの顕示欲が満たされていく。

パーティ中、ルーシーは予定通り皆の前で歌を披露することになった。

躊躇いなく息を吸い込んで、ルーシーは歌う。
のびのびと高く透き通って、空まで伸びていくようなその歌声に、皆がどよめき……そして夢中になった。

ねえ、私の歌は綺麗でしょう?
すごいでしょう?

私が1()()でしょう?
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