ヘンタイ魔術師は恋愛攻略法に悩む

リアララがランタンの明かりを掲げて、自室のドアの鍵を開けようとした時

「リアララ殿・・・お話があります・・・」

消え入るような女の声がして、
廊下の闇から、幽霊のような姿が浮き出た。

フードを深くかぶり、黒のベルベットの長いローブの隙間から
白い手だけが見えた。

「レスタ様・・・?」

リアララは狼狽を隠すよう、手の明かりを下げた。

フードが払いのけられると、黒髪がほどけて
青白い頬にかかっている。

紫の瞳は落ち着きなく揺れ、
いつもの凛とした雰囲気はなく、所在なさげに見えた。


「お話があるのですが・・・
お部屋に入れていただけますか?
ここでは寒いので・・・」

またもや語尾が消えかかる。

「わかりました。どうぞ」

リアララはドアを開けて促すと、レスタ姫は軽く頭を下げた。

その華奢な首筋を見ると、
柔らかな桃のようで、歯をあてたら甘い果汁が味わえそうだ。

レスタ姫は部屋に入ると、リアララと向き合うように立った。

「それで・・・魔法陣鑑定の事なのですが、
あなたのほうから、父に辞退すると言っていただきたいのです」

そう言うと、レスタ姫はローブの内側から何かを取り出した。

その手には、ダイヤモンドの首飾りが輝いている。

「売れば、金貨二袋以上の値段がつくはずです」

レスタ姫は首飾りをリアララの目の前にかざした。

「それは取引ですか?」

「ええ、父は一度決めたら引かない人ですから。
なので、あなたにお願いするしかないのです」

レスタ姫は首飾りを、そばの机の上に置いた。
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