ヘンタイ魔術師は恋愛攻略法に悩む
すぐにトランクから、いくつかの小瓶を取り出し、レスタ姫の上半身を抱き起した。

「これを飲め。魔力回復の薬だ。」

瓶を唇にあてがうが、脱力しているのか、液体が唇の端から垂れてしまう。

ゲホッ

背中を丸めて、咳きこむレスタ姫を
毛布でくるみ横抱きにした。

「・・・力が・・・入らない」

「息は苦しくないか・・?」

レスタ姫は、わずかに首を横に向けた。

「座った方が楽だろう。
落ち着くまで、しばらくこうしていよう」

窓の外で、いくつものカンテラの明かりが、右に左に動いているのが見える。

「雷が落ちたぞ。被害はないか、早く調べろ!!
馬屋と納屋のほうにも、誰か確認に行け!!」

男たちの野太い声が、遠くで聞こえる。

レスタ姫は目を閉じていた。

魔力の暴走は、とてつもない疲労感と睡魔に襲われる。

「眠ったのか・・・」

リアララは、その血の気のない頬を
そっとなで、ため息をついた。

この姫君は、とんでもない魔法陣を
もっていたというわけだ。

ヴァリエスタと、A国の表と裏の魔法陣。

このことを、オヤジは見抜いていたのだろう・・・

「選ばれし者」

彼女が直系の皇太子、つまり王家を正統に継ぐ存在であることを。

「この先、どうするか・・・どうしたい?」

レスタ姫は眠っていると、少女のようにあどけない。

そうか・・・姫君はキスも初めてだったのか。

リアララは首を振り、またもや大きくため息をついた。
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