ヘンタイ魔術師は恋愛攻略法に悩む
「王の魔法陣は、両足から大地と水のエネルギーを取り込むことができます。

裏の魔法陣、黒のドラゴンが動き始めると、そのエネルギーはすさまじい力に増幅される。

それを両手から放出する。
これは赤のドラゴンが、受け持つのです」

レスタ姫は自分の手のひら、中央の小さなほくろを見た。

「母も妹も赤のドラゴンだけの魔法陣だけど、それなりに魔法をつかえるわ」

「赤のドラゴンはエネルギーの放出だけでなく、大気からエネルギーを取ることもできる。

が、それほど大きな力は出ないのです」

リアララは、紙に魔法陣の絵を描き始めた。

「裏と表が連動して、はじめてすさまじい力が発動する。
これは王位継承者だけの極秘事項でしょうね」

「父は・・・陛下はそれを知っているのね」

「たぶん、王位継承の儀式のときに、魔道具かなにかと一緒に託されるのでしょう」

レスタ姫はうなずいた。

「まず、ヴァリエスタの魔法陣の動きを止めないと・・・

前にも言ったと思うが、姫の感情が高ぶると動きやすくなるので」

レスタ姫は納得するようにうなずきながら、自分の手のひらを見つめていた。

「さぁ、手のひらを出して。まず右手からやりましょう」

リアララはその手のひらに、ガラス瓶の粉をふりかけ、何かの呪文を低い声で唱えた。

長い詠唱が続き、指先で粉を塗り込んでいく。

徐々に熱を持ち始めると、粉は液に変化して斑紋に吸い込まれていった。

唱え終わると、レスタ姫は手を握りしめた。

「大丈夫だ。もう反応しないはず」

リアララは息を大きく吐き、ぐったりと椅子の背もたれによりかかった。

長い詠唱は、めんどうくさい。

しかもテンポと語句は、正確さが要求される。

「次は左手」

リアララは立ち上がり、粉の準備をはじめた。

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