幼馴染の恋の行方
 修学旅行から帰ってきて3日が経った。今日は風が強い。台風が近づいているようだ。

 友花里は今も、足にサポーターを巻いている。

「まだサポーター取れないんだ。もう少しかかりそう?」

「もう、殆ど痛みはないよ。来週にはサポーターしなくても大丈夫だと思う」

 友花里は笑顔で言った。

 僕たちは、今日も一緒に高校に通っている。



「友花里……そろそろ、聞いていい? 勇人とのこと」

「フフッ、いいよ。言い出すの待ってたんだから」

「——いつ気付いたの? ……僕が勇人を好きだってこと」

「うーん……修学旅行の少し前くらいかな。それまでは、本当に気付いてなかったの。でもね、勇人は未来のことを好きなのかな? って思う事はあった。——どうしてだと思う?」

 僕は静かに、首を横に振った。

「なんかね、未来のことを話すときだけ、ちょっと違うの。少し照れる感じって言うのかな? 上手くは言えないんだけど。でも良かったよ、他の女子と付き合うくらいなら、未来の方がいいもん。――な、なによ、泣かないでよ!」

 友花里の前で、また泣いてしまった。僕より背の高い友花里は、僕の頭を優しくなでてくれた。


「で、何か進展はあった?」

「今度、勇人ん家でご飯食べることになった。高校生のくせに、親に紹介したいんだって」

「ハハハ、そうなんだ! 勇人らしくていいじゃん。でも、親と話すの、なんか緊張しちゃいそうだよね」

「フフ、ホントに。——勇人ね、出来たらでいいから、『親の前だけでも“私”って言ってみる?』って。今更、私なんて言うの恥ずかしいんだけど」

 僕は……いや、私はそう言って笑った。

 物心ついたときから使っていた、“僕”という一人称。本当は心のどこかで、こんなキッカケを待っていたような気もする。

 うん。少しずつでいい、少しずつ“私”に慣れていこう。

 その時、突然吹いた強い風が、友花里と私のスカートをフワリとなびかせた。





〈 幼馴染の恋の行方:了 〉




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