いつか、桜の季節に 出逢えたら

第6話 1月4日 例の川

お正月が終わっても、新学期までまだ五日も残っている。

冬休みの課題はもうとっくに終わっているから、特にやることがない。
ということは、記憶を取り戻す作業に専念するしかない。

スマホの中は、見尽くした。
だとするともう、例の川に行くしかないじゃない。

というわけで。

「紫苑くん、連れて行って欲しいところがあるの」

紫苑の部屋のドアをノックする。

「お願い、お願い、お願い〜!」

コンコンコンコン……出てくるまでノックする。

「うるさいな。お前は何なんだよ、いつもいつも……」

ヘッドホンを外しながら、紫苑が顔を出した。

「何なんだって、妹ですけど? ごめん、私が助けられたという川まで、連れて行ってくれないかな。何か思い出せるかもしれないから」

「……今、取り込み中なんだけど」

ーーうわぁ、心の底から面倒くさそう。
無愛想どころか、もはや仏頂面と言ってもいいほどの不満顔。

申し訳ない……けど、あなただけが頼りなのです。

「それ、いつ終わる? 終わるの待ってるから、お願い。もうすぐ学校が始まるから、早く思い出したいんだよ」

手を合わせて、何度もお願いのポーズを取る。

私の粘りに、紫苑は諦めたようにため息を吐き、

「……じゃあ、あと15分な」

と言って自室に戻り、15分後に再び出てきてくれた。


「……で、どこだって?」

「確か、犬の散歩の看板がある、ベンチが並んだ辺りだと言われたよ。お母さんが、紫苑くんに聞いたらわかるって」

「……あー、あそこ……」

すぐに思い付けるということは、有名な場所なのだろうか。
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