いつか、桜の季節に 出逢えたら
「それが、なんで女子高生になっているのよ!?」
あまりの衝撃に、思わずツッコんでしまった。
「……? だって、お前、高校生に戻りたいって、よく言ってたじゃにゃいか?」
猫は、何を言ってるかわからないとでも言うように、キョトンと首をかしげている。
ーーそう。確かに、肉体的にも精神的にも疲弊して
「もう一度、高校生をやり直したい」
「進路変更するように言ってやりたい」
とは言っていたーー言っていたけれども!
「それなら、高校生の頃の”私”になっていないと、おかしくない!? やり直しができないじゃん!」
猫は、後ろ足で左耳を掻きながら、呑気に答える。
「高校生のお前に、今のお前の魂を入れたら、高校生のお前の魂はどこにいくにゃ? 高校生のお前が死ぬにゃ」
「死? え?……どういうこと?」
「オイラは、お前が高校生のお前に進路変更を促せるよう、お前の事故と同じ時間にちょうど空になった容れ物に、お前の魂を入れたまでにゃ」
言ってる内容はわかるけどーー信じたくない。
嘘であってほしい。否定してほしい。
「つまり、絵梨花の魂がいなくなった体に、私の魂を入れている状態……ってこと?」
「そうにゃ! 橘絵梨花は、2016年12月25日に死んだにゃ。……で、お前が一時的にその容れ物を借りているだけにゃ。さあ、高校生のお前に言ってやるがいい、進路変更をせよと!」
にゃーははは!
と、猫が高らかに笑っている。
「ちょっと、待って……」
絵梨花が、もうこの世に存在していないというだけでも衝撃的なのに。
私が絵梨花の別人格ではないどころか、赤の他人だなんて、理解が追いつかない。
「あなた、あの神社の神様なの? 神様だったら、もっと別のやり方があったんじゃないの?」
我が身に降りかかっている事態を飲み込めないまま、猫に問いかける。
「オイラは神サンじゃないにゃ。オイラは、数百年を生きる猫又、妖怪にゃ」
太いと思われていた尻尾が、二本に分かれた。
「ちなみに、あの神社の神サンとはマブダチにゃ。お前の容れ物を見つけたのは、縁結びの力を持つあの神サンにゃ。お前が通っていた神社と、ここらの氏神は神サンが同じだから、ちょうど良かったのにゃ」
ーー猫又と呼ばれるその妖怪は、次から次へと、人智を超えたとんでもないことを、ペラペラと得意気に話してくる。
「オイラは、人間のことなど棄ておけばいいと思ってるが、お前はオイラを助けた。人間に借りを作ってはならないーーそれが妖怪の掟にゃ。だから、願いを叶えてやったまでにゃ」
あざと可愛い仕草で得意気に話す猫又を、呆然と見つめるしかできない。
「……そんなこと言われても、今の私、橘絵梨花として生きてるよ。絵梨花が死んだらみんな悲しむ。どうしたらいいのよ……」
「いいにゃ? 橘絵梨花は2016年12月25日に死ぬ運命だった、これは変わらにゃい。お前が帰ると言えば、すぐにでも2025年に帰すことはできるにゃ。お前が決めろ」
ただただ呆然と聞くしかない私に、猫又は、さらに残酷な事実を伝える。
「絵梨花の体は、お前の魂のエネルギーで保っているだけだから、体が朽ちるのは止められにゃいーー三ヶ月が限界にゃ。3月24日になったらお前の魂は2025年に戻り、絵梨花が死ぬことは変わらにゃい。もしその時、向こうでお前の体が処分されてしまっていたら、そのままお前も死ぬ。どうにゃ? さっさと用事を済ませて、早く帰った方が良いにゃろ?」
あまりの衝撃に、思わずツッコんでしまった。
「……? だって、お前、高校生に戻りたいって、よく言ってたじゃにゃいか?」
猫は、何を言ってるかわからないとでも言うように、キョトンと首をかしげている。
ーーそう。確かに、肉体的にも精神的にも疲弊して
「もう一度、高校生をやり直したい」
「進路変更するように言ってやりたい」
とは言っていたーー言っていたけれども!
「それなら、高校生の頃の”私”になっていないと、おかしくない!? やり直しができないじゃん!」
猫は、後ろ足で左耳を掻きながら、呑気に答える。
「高校生のお前に、今のお前の魂を入れたら、高校生のお前の魂はどこにいくにゃ? 高校生のお前が死ぬにゃ」
「死? え?……どういうこと?」
「オイラは、お前が高校生のお前に進路変更を促せるよう、お前の事故と同じ時間にちょうど空になった容れ物に、お前の魂を入れたまでにゃ」
言ってる内容はわかるけどーー信じたくない。
嘘であってほしい。否定してほしい。
「つまり、絵梨花の魂がいなくなった体に、私の魂を入れている状態……ってこと?」
「そうにゃ! 橘絵梨花は、2016年12月25日に死んだにゃ。……で、お前が一時的にその容れ物を借りているだけにゃ。さあ、高校生のお前に言ってやるがいい、進路変更をせよと!」
にゃーははは!
と、猫が高らかに笑っている。
「ちょっと、待って……」
絵梨花が、もうこの世に存在していないというだけでも衝撃的なのに。
私が絵梨花の別人格ではないどころか、赤の他人だなんて、理解が追いつかない。
「あなた、あの神社の神様なの? 神様だったら、もっと別のやり方があったんじゃないの?」
我が身に降りかかっている事態を飲み込めないまま、猫に問いかける。
「オイラは神サンじゃないにゃ。オイラは、数百年を生きる猫又、妖怪にゃ」
太いと思われていた尻尾が、二本に分かれた。
「ちなみに、あの神社の神サンとはマブダチにゃ。お前の容れ物を見つけたのは、縁結びの力を持つあの神サンにゃ。お前が通っていた神社と、ここらの氏神は神サンが同じだから、ちょうど良かったのにゃ」
ーー猫又と呼ばれるその妖怪は、次から次へと、人智を超えたとんでもないことを、ペラペラと得意気に話してくる。
「オイラは、人間のことなど棄ておけばいいと思ってるが、お前はオイラを助けた。人間に借りを作ってはならないーーそれが妖怪の掟にゃ。だから、願いを叶えてやったまでにゃ」
あざと可愛い仕草で得意気に話す猫又を、呆然と見つめるしかできない。
「……そんなこと言われても、今の私、橘絵梨花として生きてるよ。絵梨花が死んだらみんな悲しむ。どうしたらいいのよ……」
「いいにゃ? 橘絵梨花は2016年12月25日に死ぬ運命だった、これは変わらにゃい。お前が帰ると言えば、すぐにでも2025年に帰すことはできるにゃ。お前が決めろ」
ただただ呆然と聞くしかない私に、猫又は、さらに残酷な事実を伝える。
「絵梨花の体は、お前の魂のエネルギーで保っているだけだから、体が朽ちるのは止められにゃいーー三ヶ月が限界にゃ。3月24日になったらお前の魂は2025年に戻り、絵梨花が死ぬことは変わらにゃい。もしその時、向こうでお前の体が処分されてしまっていたら、そのままお前も死ぬ。どうにゃ? さっさと用事を済ませて、早く帰った方が良いにゃろ?」