いつか、桜の季節に 出逢えたら

第27話 3月14日 Wのつく日

父がなかなか帰ってこないので、父への親孝行ができないでいる。
私が絵梨花に入った時から、関係は修復されていたけど、ちゃんと伝えてあげたいな。

母へは、絵梨花の日記通りに、(紫苑が理由だということは隠した上で)例の八つ当たりを謝って、毎日のように感謝の気持ちを伝えているので、まぁ、良しとしよう。


紫苑に事実を話してからも、なんとなく気まずくなってしまって、結局一人で登下校している。
相変わらず、君が隣にいないと、とても寂しい。

「絵梨花、この前は……ごめん」

振り向くと、莉々がいた。


「いいよ。どうかした?」

「絵梨花、まだ思い出せない?」

「……うん」


「莉々ね、可愛いから、昔からいろんな男の子に告白されてきたの」

おいおい、いきなり自慢話か。

「告白されるのが当たり前すぎて、自分から告白するとか考えられなくて」

「うん」

「もし、莉々がフラれたりしたら、今まで莉々がフッてきた男の子たちにも悪いでしょ?」

ーーそうかなぁ?

「だから、紫苑くんから告白してもらいたくて、絵梨花にお願いしていたの」

「何度も言うけど、協力はできないよ?」

ーー協力どころか、私自身が紫苑と話せなくなってるのに。


「わかってるよ。莉々ね、紫苑くんの方を動かそうとしてたけど、絵梨花でも無理なんだよね? それなら、莉々が動いた方が早くない?って、気付いちゃった。ていうか、莉々が本気を出したら、落ちない男はいないと思うの」

莉々は、目をキラキラさせている。
ーーまったく、自己肯定感maxの美少女は、自信満々で羨ましいな。

「はいはい、頑張ってね」

ーー嘘です。
本当は、莉々と紫苑が付き合うのは嫌です。
でも、それで紫苑が幸せになるのなら、祝いたいとも、思うのです。

こうやって、みんな自分で選択をしながら、変化をしながら未来に向かっていくのだな。
この世界で生きることを許されない私には、みんなの幸せを祈ることしかできない。
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