吹奏楽に恋した私の3年間

最後の音が私に響いた日

引退式の前日。

双子の茄知子と、弥簔と、フルートのかわいい子と一緒に、先輩へのプレゼントを買いに行った。

お世話になった先輩に渡すものだから、なんとなく緊張する。

でも、ワクワクもしていた。

喜んでくれるかなって、みんなで朝から夕方まで悩んで選んだ。


帰ってきてから、私は手紙を書いた。

最後だからこそ、伝えなくて後悔するのは嫌だった。

だから、照れくさいことも全部書いた。


先輩のおかげで、ホルンが好きになれたこと。


先輩がいてくれて、毎日がすごく楽しかったこと。


先輩の音色がきれいで、ずっと憧れていたこと。


そして、ありがとうの言葉と、高校でも頑張ってくださいのメッセージ。


心を込めて、全部書ききった。


引退式の日。

私たちは、部室の飾りつけと準備のために、いつもより早く学校に来た。

式は、コンクールの審査員の講評から始まった。

「中低音が弱い」

「ピッチが悪い」

「ハーモニーがずれている」

ぐさぐさ刺さる言葉ばかりだった。

そして、桜田先生が言った。





「ここにきて、まだ慣れていないのもあって、指導が行き届いてなかったりしてごめんなさい」







なんで先生が謝るんだろう。

全部、私たちの練習が足りなかったからなのに。

その言葉が、ずっと心に残ってしまった。

深く、深く後悔した。

でも、せっかくの引退式だから――って、みんなで気持ちを切り替えた。

フルーツバスケットをしたり、先輩との最後の自由時間を過ごした。

あゆか先輩にプレゼントを渡したら、すごく喜んでくれて、私もすごく嬉しかった。

しかも、あゆか先輩は私にもプレゼントをくれた。

先輩一人ひとりが、後輩へのメッセージを言う時間。

私は、耐えきれずにちょっと涙がこぼれた。 なんて涙もろいんだろう(笑)

あっという間に時間が過ぎていった。

でも、あの日の音は、ずっと心に残っている。 最後の音が、やさしく響いた日だった。
< 15 / 32 >

この作品をシェア

pagetop