召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「仕方がないでしょう。あのタロットカードも、図書館に寄贈していたんです。けれど……」
「ある日突然、この禁書区画から消えてしまったんです」
「ラモーナ……」

 チラッとマックスに視線を向けながらも、ラモーナは言葉を続けた。

「禁書区画に侵入者が現れた痕跡もなく、当時どれだけ焦ったことか、計り知れません。けれど今日、彼らが現れて確信しました」
「そうですね。「我々の手にあるべき物だった」と豪語するくらいですから、おそらく召喚魔術をしようして、遠隔でタロットカードを手に入れるつもりだったのでしょう」

 今度はグリフィスが、マックスに冷たい視線を送った。けれど次の瞬間、いきなり抱き寄せられた。

「ウルリーケはどうやら、我が妻を気に入ったようですね。昔から私と好みが似ていましたので、何も不思議に思いませんが」
「そ、そうなんだ」

 って、いやいやそういうことじゃなくて! いきなりなんなのよ!

 そう言いそうになったけれど、ラモーナや図書館の職員がいる空間では、仲の良い夫婦を演じている方が都合がいい。ここに来る前のグリフィスを見ていると……本当に演技なのかは疑わしかった。

 しかし、すでに仲の良い夫婦アピールは、迎えとかで十分できていたはずだから、ここまでする必要はないのに……どうして?

 グリフィスを見上げていると、今度はマックスの怒気を含んだ声が飛んできた。
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