召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「……本屋を経営している者から言わせていただきますと、どんな分野を好きかなんていうのは、人それぞれです。だから図書館もそうですが、本屋もまた、多種多様な本を取り揃えています。偏見を持っていたら、仕事になりませんよ」

 確かに人目や世論を気にすることは大事だ。孤独を選ぶことは悪いことではないが、孤立してしまうと、いざという時、困ってしまう。私も時々、寂しい感情の方が上回ってしまうが、今はアゼリアがいる。社会との繋がりを作ってくれる重要な人間であり、孤立しない手段。

 偽装結婚の裏に、こんな姑息な感情があったと知ったら、アゼリアは軽蔑するだろうか。

「グリフィスの言う通りね。確かに偏見を持っていたら仕事にならないわ。利用者が探し求めているものは千差万別なんだもの」
「えぇ。その通りです」

 アゼリアなら……もしかしたら受け入れてくれるかもしれない。けれど今はまだ、時間が必要だった。
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