ぶーってよばないで!改訂版
私、華待真瑠璃。
名門小百合ヶ丘学園に通う高校三年生だよ!
実は私、高校生になってから十五キロも体重が増えちゃったの。
自分でももう、どうしたらいいのかわからない!
というのは嘘で…。
原因はわかっているんだ。
それはね…。
パパが人気グルメ雑誌「Maison de BonBon《メゾンドボンボン》」の雑誌編集長に大抜擢されたからなの。
パパが持ち帰ってくるたっくさんの美味しい食べ物に、私の心はすっかり奪われて。
そこから、体重は増加の一途を辿っている。
これではいけない!と思ってダイエットを始めてみたものの、目の前にある誘惑に三日坊主で終わり。
今も、記録更新中‼︎
どこまで伸びる、私の体重‼︎
 
「ねえ、ぶー。今日、プリクラ撮って帰らない?」
「私、パス。」
「なんでよ、ぶー。」
プリクラは、瑛里のようにキラキラ可愛い女の子同士で撮ればいい!私なんて、瑛里の引き立て役になるだけなんだから。
「瑛里?いい加減、ぶーってよばないで。」
一日中『ぶーぶー』って、うんざり。
何度やめてと言っても、瑛里の耳には届きそうもない。
「相変わらず付き合い悪いなあ。いつになったら、プリクラ付き合ってくれるのよ?それでも、私たち幼なじみ?」
「瑛里は、彼氏と撮ればいいじゃん。」
「違う違う、ぶーと撮りたいの!お願い!」
私が何度『ぶーって呼ばないで!』と訴えても、瑛里の心には響かない。瑛里は昔から、人の気持ちなんて全くお構いなし。
「そういえば、瑛里の彼氏って確か、隣りの男子校に通っているんだよね?」
むくれる瑛里が、ご機嫌になりそうな話題にすり替える。
「そうなの!なかなか同じバスにならないよね。ぶーに紹介したいのに。」
「いやいや、お気遣いなく。」
「も〜、いつになったら、彼氏に会ってくれるの?それでも幼なじみ?」
 瑛里は、彼氏ができても長続きしない。今の彼氏で何人目だろう。前の彼氏は同じ塾の子だったけれど、一ヶ月でお別れしていた。
頭の中が常に恋愛モードの瑛里は、付き合う前もお別れしてからも、とにかく大変!
瑛里からのLINE電話攻撃に、私はの体力は限界になることも。
だから‼︎
一日でも長く瑛里が彼氏と仲良しでいてくれることを、本気で願っている‼︎
 
【次は、橋羽西〜橋羽西〜】
やっと私が降りるバス停に着いた。
瑛里のお付き合いも、一旦、休憩。
「じゃあね、瑛里、また明日ね‼︎」
「えー、もう降りるの?早いなあ。」
「気をつけて帰ってね。」
「ぶー、またLINEするから!ちゃんと見てよ、お願い!お願い!ぶー様ッッ。」
両手を重ねて、私を拝む瑛里。
ぶー様ッッて……
はあ。とため息がこぼれる。
「気が向いたらね。とりあえず、テスト前だからピアノの練習しなきゃ。」
「あ〜全然面白くない!」
ほっぺを思い切り膨らませて、瑛里がむくれる。
「瑛里も練習しなよ!あと少しだよ?」
「ママみたいなこと言わないで。」
「それじゃあ、また明日ね!バーイ。」
ブッブー
瑛里を乗せたバスの扉が閉まった。

ニッコリ笑って手を振る私に、なぜか悲しそうな顔で見返す瑛里。
『運転手さん!早く出発しちゃってください。そして無事に瑛里を最寄りまでお願いします!』

バスは順調に進んでいった。
やれやれ、これで少しはゆっくりできそう。
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