ぶーってよばないで!改訂版
【校門】
春の光に照らされた校門前。まだ少し冷たい風が吹くけれど、胸の奥は不思議と温かい。

「真瑠璃、おめでとう!第一志望合格したな!」
隆也の笑顔は、まぶしくて、少し眩しい。

「隆也こそ、第一志望合格、本当におめでとう!これで、夢にまた一歩近付いたね。」
「ありがとう!」

「隆也……。」
気づけば、私は制服の袖をぎゅっと握りしめていた。

「ん?どうした?」
「私、ずっと考えていたんだ。」
「何を?」
「隆也って、私にとってどんな存在なんだろうって。」

「うん。」
隆也の横顔を見つめると、言葉が止まらなくなる。

「昔から、気づいたらそばにいる幼なじみなの。」
「……」
「ううん。幼なじみっていう言葉では片付けられない、もっと特別な存在。」

隆也は黙って耳を傾けてくれている。
その沈黙が、逆に心を後押しした。

「私にとって隆也は、何も考えずに心の中の嬉しいことも悲しいことも話せる存在。」
声が震えているのが、自分でもわかる。

「もしも隆也が私の目の前からいなくなっちゃったら?周ちゃんみたく、海外へ行ってしまったら。考えただけで胸がはち切れそうで。居ても立っても居られない気持ちでいっぱいになって。」
頬が熱い。風邪なんかじゃない。

「私は、ずっと隆也のそばに居たい。絶対に、絶対に離れたくないって思ったの。」
そう言うと、胸の奥で張り詰めていたものが、少しだけ解けた気がした。

「……。」
「これ、受け取ってくれる?」
両手で差し出す、小さな包み。不格好だけど、心だけは込めた手作りチョコレート。

「真瑠璃…。」
隆也の目が揺れている。

今日はホワイトデー。

本当は、バレンタインデーのチョコレートをもらった男性が女性にお返しをする日。
私は、今まで沢山の優しさをくれた隆也に、どうしても応えたかった。

「俺、ずっとこの日が来ることを夢見ていたんだ…。」
「隆也…。」

気づくと、隆也の目から涙があふれていた。
胸がギューッと締めつけられる。
私、隆也のことをこんなにも待たせてしまっていたんだ…。

小学一年生の私。
あの日の小さな約束は、未来への大きなお土産だったんだね。

「ありがとう。俺、真瑠璃のことが、昔からずっと、ずっと大好きだよ。」

春の風に揺れる校門の影。
神様がいるとしたのなら、私はきっとこう言うだろう。

私に、沢山の素敵な人との出会いを与えてくれて、心からありがとうございました。
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