元文化部と元運動部の深夜ウォーキング
しかし、バッグではなく何かもふもふとしたものが手に当たった。咄嗟(とっさ)に手を引っ込めながら、顔を向ける。

「ギャッ!」

一応女子大生なのだが、二十代女性とは思えないほどおっさんみたいな声が出てしまう。

でも、それも仕方ないと思う。だってもふもふとした手触りの先に視線を向けたら、そこには同じサークルの笠木(かさき)くんが寝転がっていた。

もふもふとした手触りは笠木くんの髪だったようで。
 
私もまだ起きたばかりで隣の椅子にまで意識が入っていなかったらしい。

それに笠木くんは椅子に寝転んでいたので見えにくかったのだと思う。

それでも人に気づかないなんて私も寝ぼけすぎだと思うけれど。
< 2 / 36 >

この作品をシェア

pagetop