元文化部と元運動部の深夜ウォーキング
1キロ地点まで
歩き始めて、五分。私は既に四キロという長さに絶望していた。

「一生、家に着く気がしない……」

「大袈裟だなぁ。大分進んでいるって。まぁ、まだ五百メートルも歩いてないけど」

「なんで今フォローするフリして現実を突きつけたの!?」

「ごめんごめん、もうすぐ二キロだよ」

「今更見え透いた嘘をつかないで!」

お酒も程よく抜けているような、抜けていないような。

深夜テンションのような、普段のままのような。

そんなよく分からないテンションで私は笠木くんと話している。

夜風は冷たいのにお酒でほてった頬にはちょうど良くて、むしろもっと風が吹いてほしいと思ってしまう。もう風で髪型が崩れるとか気にする段階でもなかった。
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