無敵なお嬢様はだまっていられない! 〜問題児な執事4人を、私がまとめてプロデュース!?〜
寮を抜け出した私たちが向かったのは――なんと駅だった。
リムジンの運転手もいない、慣れない移動。
自動改札の前で、私は受け取った小さな紙を見つめ、首をかしげる。
「……これはなに?」
「切符! あそこに通すと、改札が開くんだよ」
「……えっ、これを入れるだけで開くの?
あのゲート、どういう仕組みなのかしら……」
「お嬢、理屈はいいから! ほら、スッて入れろ、スッて!」
嵐くんに急かされて、おそるおそる切符を通す。
……ピッ。
ゲートが開いた。
「……っ!」
その瞬間、なんだか小さな冒険に成功したみたいで、胸が少しだけ弾んだ。
ガタンゴトン、と電車が揺れる。
窓の外を流れていく景色を見ながら、私はそっと、隣に座る朔の横顔を見た。
「ところで……これからどこへ行くの?」
「――遊園地」
私は、目を少し見開いた。
「遊園地って……たしか、六歳のとき……」
「そう。……俺の父さんが、すずのわがまま聞いて、こっそり連れ出したとき以来だな」
朔のお父さんは、昔、私の専属の執事だった。
厳しいお父様の目を盗んで、一度だけ。
幼い私と朔を、遊園地に連れて行ってくれたことがある。
『すず様、今日だけは「普通の子」に戻りましょう。……お父様には内緒ですよ』
優しく笑う顔を、今でも覚えている。
でも――。
あのときの私は、お父様にバレるのが怖くて。
メリーゴーランドを一回乗っただけで、「もう帰りたい」って、泣き出してしまった。
遊園地にいた時間は、たった三十分。
――それが、私の遊園地の記憶の全部だった。
「……あのときは、ごめんなさい。
私のせいで、すぐ帰ることになって」
「謝んなって」
朔が、少しだけ笑う。
「父さんも言ってた。
……すずがちょっとでも笑えたなら、三十分でも三時間でも同じだって」
ぽん、と。
不器用な手つきで、頭を軽く叩かれた。
「……到着しました。……目的地、遊園地です」
夜一くんが、時計を見ながら静かに言う。
「……現在、14時30分。
……前回の“30分記録”を超えるまで、あと29分です」
「なにそれカウントすんなって!」
嵐くんがツッコミを入れる。
電車を降りると、ふわっと、お菓子みたいに甘い匂いがした。
あの日と同じ匂い。
胸の奥が、少しだけあたたかくなる。
朔がぶっきらぼうに、キャラクターの耳カチューシャを私に差し出してきた。
「な、なによそれ! 私がこんな……ピンクのクマ耳なんて、つけるわけ――」
「いいから、つけてみれば?」
ぴしっと言い切られる。
「……こういう、ふわふわした可愛いもの、たまにはつけてみてもいいんじゃん」
「なっ……!?」
言い返す前に、ひょいっと。
朔が強引に、私の頭にカチューシャを乗せた。
「ちょ、ちょっと! 勝手に――!」
あわてて外そうとして、ふと手が止まる。
ゲートのガラスに映った自分の姿が、目に入ったからだ。
頬を真っ赤にして、ピンクのクマ耳をつけてる私。
いつもの“完璧なお嬢様”とは、まるで別人みたいで――
……この場所の空気、やっぱりおかしいわ。私のコントロール、完全に乱されてる……!
でも。
ほんの少しだけ、その姿を見ている自分が――嫌じゃないと思ってしまった。
「さあ、お嬢様」
レオくんが、優雅に手を差し出す。
「今日の僕たちは、君のお父様よりずっと手強いよ。
……『帰る』なんて言う暇もないくらい、楽しませてあげる」
「ほら行くぞ、お嬢!」
嵐くんに背中を押される。
前に進むしかない。
三十分で終わってしまった「あの日」の続きが――今、もう一度、動き出す。
リムジンの運転手もいない、慣れない移動。
自動改札の前で、私は受け取った小さな紙を見つめ、首をかしげる。
「……これはなに?」
「切符! あそこに通すと、改札が開くんだよ」
「……えっ、これを入れるだけで開くの?
あのゲート、どういう仕組みなのかしら……」
「お嬢、理屈はいいから! ほら、スッて入れろ、スッて!」
嵐くんに急かされて、おそるおそる切符を通す。
……ピッ。
ゲートが開いた。
「……っ!」
その瞬間、なんだか小さな冒険に成功したみたいで、胸が少しだけ弾んだ。
ガタンゴトン、と電車が揺れる。
窓の外を流れていく景色を見ながら、私はそっと、隣に座る朔の横顔を見た。
「ところで……これからどこへ行くの?」
「――遊園地」
私は、目を少し見開いた。
「遊園地って……たしか、六歳のとき……」
「そう。……俺の父さんが、すずのわがまま聞いて、こっそり連れ出したとき以来だな」
朔のお父さんは、昔、私の専属の執事だった。
厳しいお父様の目を盗んで、一度だけ。
幼い私と朔を、遊園地に連れて行ってくれたことがある。
『すず様、今日だけは「普通の子」に戻りましょう。……お父様には内緒ですよ』
優しく笑う顔を、今でも覚えている。
でも――。
あのときの私は、お父様にバレるのが怖くて。
メリーゴーランドを一回乗っただけで、「もう帰りたい」って、泣き出してしまった。
遊園地にいた時間は、たった三十分。
――それが、私の遊園地の記憶の全部だった。
「……あのときは、ごめんなさい。
私のせいで、すぐ帰ることになって」
「謝んなって」
朔が、少しだけ笑う。
「父さんも言ってた。
……すずがちょっとでも笑えたなら、三十分でも三時間でも同じだって」
ぽん、と。
不器用な手つきで、頭を軽く叩かれた。
「……到着しました。……目的地、遊園地です」
夜一くんが、時計を見ながら静かに言う。
「……現在、14時30分。
……前回の“30分記録”を超えるまで、あと29分です」
「なにそれカウントすんなって!」
嵐くんがツッコミを入れる。
電車を降りると、ふわっと、お菓子みたいに甘い匂いがした。
あの日と同じ匂い。
胸の奥が、少しだけあたたかくなる。
朔がぶっきらぼうに、キャラクターの耳カチューシャを私に差し出してきた。
「な、なによそれ! 私がこんな……ピンクのクマ耳なんて、つけるわけ――」
「いいから、つけてみれば?」
ぴしっと言い切られる。
「……こういう、ふわふわした可愛いもの、たまにはつけてみてもいいんじゃん」
「なっ……!?」
言い返す前に、ひょいっと。
朔が強引に、私の頭にカチューシャを乗せた。
「ちょ、ちょっと! 勝手に――!」
あわてて外そうとして、ふと手が止まる。
ゲートのガラスに映った自分の姿が、目に入ったからだ。
頬を真っ赤にして、ピンクのクマ耳をつけてる私。
いつもの“完璧なお嬢様”とは、まるで別人みたいで――
……この場所の空気、やっぱりおかしいわ。私のコントロール、完全に乱されてる……!
でも。
ほんの少しだけ、その姿を見ている自分が――嫌じゃないと思ってしまった。
「さあ、お嬢様」
レオくんが、優雅に手を差し出す。
「今日の僕たちは、君のお父様よりずっと手強いよ。
……『帰る』なんて言う暇もないくらい、楽しませてあげる」
「ほら行くぞ、お嬢!」
嵐くんに背中を押される。
前に進むしかない。
三十分で終わってしまった「あの日」の続きが――今、もう一度、動き出す。