無敵なお嬢様はだまっていられない! 〜問題児な執事4人を、私がまとめてプロデュース!?〜
翌日。中庭には、ちょっと変で、でもピリッとした緊張感が広がっていた。
嵐くん、夜一くん、レオくんの三人は目隠しをされていて、その手には、こぼれそうなくらい紅茶が入ったカップを持っている。
「……ねえ、お嬢様。これ、一歩でもミスしたら、僕の大事な服が紅茶まみれなんだけど。……ちょっとスリルありすぎない?」
レオくんが苦笑しながら言う。
その足元には、私が置いた障害物――ティーカップの山や細い道、足元には小さなボールが転がる。
頭上には風に揺れる枝がしなり、さらに周りには他クラスの生徒が不規則に動き回っている。
「いい? 本番は、予想外のことだらけになるわ。
それを全部、なかったことみたいに動かすのが“司令塔”の仕事よ。……さあ、朔。準備はいい?」
「……ああ。いつでもいい」
花壇ブロックに座る朔は、少しだけ力を抜いた姿勢で答えた。
昨日までみたいな焦りはない。
落ち着いた目で、まっすぐみんなを見ている。
「……いくわよ。3、2、1――スタート!」
合図と同時に、三人が一斉に動き出した。
目隠しをしているのに、迷いがない。
それは――朔の声を信じているから。
「……嵐、右に少し。三歩進んで。……前にカップある、気をつけろ」
静かで、でもはっきりした声。
嵐くんはその通りに動いて、ギリギリで障害物を避ける。
「……夜一、上に枝がある。少しかがめ。……そのまま進め」
夜一くんが、まるで見えているみたいにスッと避ける。
「……レオ、その道、滑る。……右足に重心置いてゆっくり行け。……大丈夫、見てる」
レオくんが優雅に進む。
カップの紅茶は、一滴も揺れない。
朔はもう、画面の数字だけを見ているわけじゃない。
足音、空気の流れ、ほんの小さな変化まで感じ取っている。
「……いいわね。今のあなた、ちゃんと“空気”が見えてる」
「……別に。
あいつらがどう動くか、なんとなくわかるだけだ」
朔は気の抜けた声で言う。
さすがね。
私より、朔のほうがみんなとの付き合いは長いものね。
「……あと、お前の紅茶をこぼすと面倒だからな」
ぶっきらぼうだけど、ちゃんと仲間を見ている声だった。
右、左、止まれ、進め。
短い言葉だけで、三人は迷いなく進んでいく。
……すごい。私の計算より、ほんの少しだけ早い……。
タブレットには「成功率100%」の表示。
朔の“声”が、バラバラだった動きをひとつにつないでいた。
「……お疲れ様。みんな、ゴールよ!」
三人が止まる。
「さすがね、朔。完璧! これなら本番でも、何が起きても対応できるわね」
「……だといいけどな」
朔は安心したように、小さく息を吐いた。
「……少し休む。
本番で倒れたら、さすがに笑えないでしょ」
そう言って、軽く手を振る。
無理にかっこつけるわけでもなく、今まで通りの自然体のまま。
その背中は、もう迷っていなかった。
空は少しずつ明るくなっていた。
私たちの準備は――もう、完璧だった。
嵐くん、夜一くん、レオくんの三人は目隠しをされていて、その手には、こぼれそうなくらい紅茶が入ったカップを持っている。
「……ねえ、お嬢様。これ、一歩でもミスしたら、僕の大事な服が紅茶まみれなんだけど。……ちょっとスリルありすぎない?」
レオくんが苦笑しながら言う。
その足元には、私が置いた障害物――ティーカップの山や細い道、足元には小さなボールが転がる。
頭上には風に揺れる枝がしなり、さらに周りには他クラスの生徒が不規則に動き回っている。
「いい? 本番は、予想外のことだらけになるわ。
それを全部、なかったことみたいに動かすのが“司令塔”の仕事よ。……さあ、朔。準備はいい?」
「……ああ。いつでもいい」
花壇ブロックに座る朔は、少しだけ力を抜いた姿勢で答えた。
昨日までみたいな焦りはない。
落ち着いた目で、まっすぐみんなを見ている。
「……いくわよ。3、2、1――スタート!」
合図と同時に、三人が一斉に動き出した。
目隠しをしているのに、迷いがない。
それは――朔の声を信じているから。
「……嵐、右に少し。三歩進んで。……前にカップある、気をつけろ」
静かで、でもはっきりした声。
嵐くんはその通りに動いて、ギリギリで障害物を避ける。
「……夜一、上に枝がある。少しかがめ。……そのまま進め」
夜一くんが、まるで見えているみたいにスッと避ける。
「……レオ、その道、滑る。……右足に重心置いてゆっくり行け。……大丈夫、見てる」
レオくんが優雅に進む。
カップの紅茶は、一滴も揺れない。
朔はもう、画面の数字だけを見ているわけじゃない。
足音、空気の流れ、ほんの小さな変化まで感じ取っている。
「……いいわね。今のあなた、ちゃんと“空気”が見えてる」
「……別に。
あいつらがどう動くか、なんとなくわかるだけだ」
朔は気の抜けた声で言う。
さすがね。
私より、朔のほうがみんなとの付き合いは長いものね。
「……あと、お前の紅茶をこぼすと面倒だからな」
ぶっきらぼうだけど、ちゃんと仲間を見ている声だった。
右、左、止まれ、進め。
短い言葉だけで、三人は迷いなく進んでいく。
……すごい。私の計算より、ほんの少しだけ早い……。
タブレットには「成功率100%」の表示。
朔の“声”が、バラバラだった動きをひとつにつないでいた。
「……お疲れ様。みんな、ゴールよ!」
三人が止まる。
「さすがね、朔。完璧! これなら本番でも、何が起きても対応できるわね」
「……だといいけどな」
朔は安心したように、小さく息を吐いた。
「……少し休む。
本番で倒れたら、さすがに笑えないでしょ」
そう言って、軽く手を振る。
無理にかっこつけるわけでもなく、今まで通りの自然体のまま。
その背中は、もう迷っていなかった。
空は少しずつ明るくなっていた。
私たちの準備は――もう、完璧だった。