きみと、まるはだかの恋
「それにしてもお姉さん、どっかで見たことある顔だな。もしかして有名人だったりする?」

「い、いえ。有名人というほどでは」

「そう? じゃあ俺の勘違いかー。申し訳ないね」

 ごめん、両手を軽く合わせてお茶目なポーズで謝る長嶋さん。なんだか彼にそんなふうに謝られると、逆に申し訳なくなる。長嶋さんにいくらからかわれても、そんなに嫌な気分にならないから不思議だ。彼の人柄がなせるわざなんだろう。

「それじゃあお二人さん、今日もごゆっくり〜」

 長嶋さんは昴が仕事をしに来たのも知っているはずなのに、にっこりと楽しそうな笑みを浮かべて私たちを送り出してくれた。ロープウェイのゴンドラの中で、昴が「長嶋さんは」と小さく笑みをこぼす。

「いつもあんな感じでからかってくるけど、良いひとなんだよ。俺がこっちに引っ越してきて右も左も分からなくなってたとき、いろいろと丁寧に教えてくれたんだ。歳も近いし、頼りになる男だよ、あのひとは」

「そうなんだ。優しそうだもんね。昴もいろんなひとに助けられてきたんだね」

「当たり前だろ。いきなりど田舎に引っ越してきてすっと生活に馴染むなんて不可能だ。東京に住んでたころはさ、マンションの隣のひとの顔すら知らなかったのに、星見里に来たら全員顔見知りみたいなもんで、不思議だよ。助け合わないと生きていけないから。鬱陶しいと思うことだってあるけれど、やっぱり俺は、ここのひとたちの温かさに触れられて良かったと思う」
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