きみと、まるはだかの恋
 翌日、九月二十七日土曜日の夜。
 農家には土日などなく、今日も昴は朝から昼間にかけて農作業をしていた。私はというと、昨日よりもだいぶ腰の痛みは良くなっていたものの、念のためと昴に言われて家でゆっくりしていた。
 そういえば最近香水をつけていないな、とふと思う。
 香りがなくても、こうして自然に囲まれた生活をするだけで身も心もリフレッシュされることに気づいた。
おかげで『星見高原へのロープウェイのりば』へと着く頃にはすっかり腰は良くなっていて、丸一日半休ませてくれた昴にそっと感謝した。

「よお昴! ってまた、彼女さん一緒じゃん! もしかして二人、一緒に住んでる?」

 受付の長嶋さんが、先週と同じように昴をからかう。私は、毎度のことながら顔が火照っていくのを感じた。

「だから彼女は違いますって!」

 一応否定はするものの、一緒に暮らしているというところは合っている。昴も、あまり強く否定できないと思ったのか、顔を赤くしてぷいっと横を向いた。

「ええ、そうなの。でもすごい美人だよね。高校の同級生って言ってたよね? それ以来ずっと友達ってこと?」

「はい、まあ。そんなところです」

 昴がちらりと横目で私を見ながら答える。「そんなところ」と言われてしまい、まあそうとしか言いようがないのだけれど、ちょっぴり寂しさを覚える。
 昴にとって私ってその程度の人間だよね。
 いちいち彼の社交の言葉一つ一つを気にしていても仕方ないのに。昴の返事を聞いた長嶋さんは、「へえ」とこれまた私をじっと見つめた。
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