きみと、まるはだかの恋
【分かった。悲しいけど、あなたが下した決断なら仕方ないね。短い間だったけれど、ありがとう】
午前七時十五分。彼に送ったメッセージは永遠に「既読」がつかないまま。いつのまにかブロックされていたようだ。
「返事も聞かないうちにブロック!? なんてひと……!」
無性にイライラして、つい近くにあったクッションをぽこぽこと叩く。その男を選んだのは自分だろ、と脳内で自分の声が響いて虚しくなってきた。
「私って、恋愛向いてないのかな……」
どんなに明るくいようと思っても、ひとりでいるとつい弱音がこぼれ落ちる。
ネット上での出会いだって、私は大切にしようと思っているのだ。そういう出会いが「続かない」のは統計的に見てもそうなのかもしれないけれど、少なくとも私自身は、一度好きになったひとは最後まで愛しぬこうと思いながら交際をしている。
“最後”っていつ?
心の中で問いかける。
結婚するとき? いや、それだと結婚したら愛が冷めるみたいじゃないか。じゃあ、命尽きるとき?
この気持ちって“重い”のかなぁ……。
交際三ヶ月でさすがにそこまでは口には出していないけれど、裕もそんな私の気持ちを察知して重いと感じてしまったのだろうか。
「忘れるしかないよね」
そう。忘れるしかないのだ。恋に破れたときの痛みなんて、時が経てば忘れられる。忘れられると信じていなければ、やっていけない。
ふと脳裏に、高校時代に初めて恋をした相手の顔が浮かんだ。誰かとひとつの恋が終わると、いつも思い出してしまう。叶わなかった初恋の思い出は美化されて、記憶の海を長い時間漂っている。一度交際をして別れたひととの思い出は風化して何も思い出せなくなるのに、あの初恋の喜びや痛みだけは、どうも心の中にずっと棲みついている。まるで、少女時代に持っていたおもちゃを宝箱にしまって鍵をかけてしまっているかのように。で、鍵がなくなって、中に入れたものを取り出せなくなるのだ。あの初恋も――昴への恋心もきっと、鍵付きの大切な思い出なのだ。自分の中では。
午前七時十五分。彼に送ったメッセージは永遠に「既読」がつかないまま。いつのまにかブロックされていたようだ。
「返事も聞かないうちにブロック!? なんてひと……!」
無性にイライラして、つい近くにあったクッションをぽこぽこと叩く。その男を選んだのは自分だろ、と脳内で自分の声が響いて虚しくなってきた。
「私って、恋愛向いてないのかな……」
どんなに明るくいようと思っても、ひとりでいるとつい弱音がこぼれ落ちる。
ネット上での出会いだって、私は大切にしようと思っているのだ。そういう出会いが「続かない」のは統計的に見てもそうなのかもしれないけれど、少なくとも私自身は、一度好きになったひとは最後まで愛しぬこうと思いながら交際をしている。
“最後”っていつ?
心の中で問いかける。
結婚するとき? いや、それだと結婚したら愛が冷めるみたいじゃないか。じゃあ、命尽きるとき?
この気持ちって“重い”のかなぁ……。
交際三ヶ月でさすがにそこまでは口には出していないけれど、裕もそんな私の気持ちを察知して重いと感じてしまったのだろうか。
「忘れるしかないよね」
そう。忘れるしかないのだ。恋に破れたときの痛みなんて、時が経てば忘れられる。忘れられると信じていなければ、やっていけない。
ふと脳裏に、高校時代に初めて恋をした相手の顔が浮かんだ。誰かとひとつの恋が終わると、いつも思い出してしまう。叶わなかった初恋の思い出は美化されて、記憶の海を長い時間漂っている。一度交際をして別れたひととの思い出は風化して何も思い出せなくなるのに、あの初恋の喜びや痛みだけは、どうも心の中にずっと棲みついている。まるで、少女時代に持っていたおもちゃを宝箱にしまって鍵をかけてしまっているかのように。で、鍵がなくなって、中に入れたものを取り出せなくなるのだ。あの初恋も――昴への恋心もきっと、鍵付きの大切な思い出なのだ。自分の中では。