きみと、まるはだかの恋
「今は……」

「ん」

「今は私のこと——どう思ってる?」

 ブン、と軽トラが止まった。昴が思い切り急ブレーキを踏んだのだ。身体が前のめりに跳ねて、思わず「わっ」と小さく悲鳴を上げる。
「どうしたの?」と聞かなくても分かった。目の前を、一匹の鹿が通り過ぎている。のそりのそり、とマイペースに歩いていく鹿さんを見て、気持ちが和やかに変わった。

「……っと。あぶねー。考え事してたら轢いちゃいそうになった」

「こんなに大きな動物とぶつかることなんてある?」

「あるある。鹿やらイノシシやら急に飛び出してくるからさ」

「へえ〜。東京では見ない光景だね。でも轢かなくてよかった」

「そうだな」

 ふう、と昴が大きく息を吐く。鹿さんはちょこんとお辞儀をするように頭を下げて、私たちの前を通り過ぎていった。
 気を取り直した様子の昴が、再びアクセルを踏み直す。

「さっきの質問だけど」

 鹿さん騒動で忘れられたかと思ったのに、まっすぐ前を向いた彼が続けた。
 え、もしかして答えてくれるの?
 自分で聞いたはずなのに心の準備ができていない。バクバクと心臓が一瞬にして激しくなった。
 どうしよう。ここで答え、聞いちゃう? 今両想いかどうか分かるの!? ちょっと待って、それは——。
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