きみと、まるはだかの恋
 昴は私の切実な視線を受けたからか分からないが、臆することもなく私の前に躍り出て、テレビ局のカメラとマイクの前に立ちはだかった。

「悪いけど、彼女のプライベートを勝手に撮らないでください。撮るなら事前にアポとってきてください」

 凛とした声色に、胸がきゅんと鳴る。後ろ姿しか見えないけれど、昴は今、キリッとした表情をテレビ局のひとたちに向けているに違いない。

「き、きみはもしかしてハナの恋人さん?」

「僕の話、聞こえてますか? 星見里の魅力を世に広めてくださるのは嬉しいのですが、今日のところはお引き取りください。みなさんも、もし自分が見知らぬ誰かから突然カメラを向けられたらどう思うか——想像してください」

 昴の一言に、私を囲っていたひとたちがさっとスマホを下ろした。圧倒的な正論を前に、誰も何も言い返せない様子だった。一人、また一人、とその場を離れていく。最後に残ったテレビ局のひとたちも、申し訳なさげに眉を下げながら、なんとも言えない表情で立ち去っていった。

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