きみと、まるはだかの恋
***

 その日の夜、私は昴が作ってくれたりんごサラダとチキン南蛮を頬張りながら、昴の壮大な(・・・)計画について、話を聞いた。

「カフェをつくりたい?」

 突拍子もない言葉が昴の口から紡ぎ出された。サクッとしたチキン南蛮の食感と、甘酸っぱいタルタルソースの味すら感じられなくなるほどびっくりして思わず身を乗り出す。

「ああ。みんなに星見里の魅力を知ってもらえるようなカフェ。実は前から、カフェをやってみたいと思ってたんだ。コンセプトは“デジタルとリアルをつなぐ場”」

「デジタルとリアルをつなぐ……?」

 昴は満天の星空を見上げる少年のように目をきらきらと輝かせながら、自身の計画について熱く語っている。まさか、彼がカフェをつくろうだなんて言い出すとは思ってもおらず、私はただ食事をする手を止めて、彼の計画にひたすら耳を傾けるばかりだった。

「ああ。俺思ったんだ。波奈が案件で星見里のPR活動に来てくれたり、SNSで星見里のことを投稿してこの場所の魅力を発信してくれたりしてるところを見て。いくらデジタルなんて必要ない暮らしをしていても、やっぱり観光客や農作物を買ってくれるお客さんは必要だろ? この村のひとたちは高齢の方がほとんどだから、あんまりそういうことに気づいてないんだ。でも、波奈が来てくれて痛感した。今日のりんご農場で波奈を囲ったお客さんたちだって、波奈の発信を見て来てくれたひとがほとんどじゃないかな? だから、お店にはWi-Fiを完備して、メニューもSNSに“映える”ようにしてさ。もちろん、食材は星見里の農作物を中心に使う。……どうかな?」

 頭の中に広がる計画を一心不乱に話す昴は、これまでこの場所で目にしてきたどの昴よりも輝いていて、一生懸命だなと感じた。
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