きみと、まるはだかの恋
「ほら、考えないでって言ったでしょう? これから忙しくなりますね。頑張ってくださーい」

 手をひらひらと振ってその場から去っていこうとする星田さんに、私は咄嗟に声を上げる。

「星田さん! あの、私たち二人でカフェをつくろうと思ってるんです。完成したら、星田さんもぜひ来てください……その、嫌でなければ」

 嫌な気分にさせてしまわないか不安だったけれど、やっぱり星田さんも星見里で出会った大切な仲間の一人だ。私は、精一杯の誠意をこめて彼女に言葉をかけた。
 星田さんはくるりと私のほうを振り返ったあと、にっこり笑って、

「そうなんですね! ぜひお邪魔しまーす!」

 といつもの軽いノリで答えてくれた。
 きっとそれが、彼女なりの誠意なのだろう。私は昴とほっと顔を見合わせると、星田さんはくるりと踵を返した。

「あの、村長」

 星田さんが去っていくのを確認したあと、昴が村長に声をかける。

「何かね?」

 昴を覗き込むようにして問いかける村長は、孫の話を聞こうとしている優しいおじいちゃんのようだ。

「実はちょっと、お願いがあるんです」

 昴はそう前置きをすると、村長にとある「お願い」を話し出した。
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