きみと、まるはだかの恋
翌日、十月二十日月曜日の朝、私たちは早々に農作業を切り上げて、地元の工務店『滝川工務店』を訪れていた。工務店は役場から西の方面に、十分ほど進んだところにある。比較的大きな通りに面しているので、車で通りかかったら看板が目に入る。ここらで工務店と言えば滝川工務店しかないようで、空き家のリフォームなんかも滝川工務店に依頼するのが妥当なようだった。
「こんにちは」
工務店の扉を開けると、雑多な書類や本が積まれた事務所の中に、机に向かって鉛筆で書き物をしている男性が一人、カウンターの奥に座っていた。
短い白髭が生えた顎を触りながら、机と睨めっこしている。私たちがやって来たのも見えていないのか、「あの〜」と私が声を上げたところでようやく顔を上げた。かけていた老眼鏡を外して、歌舞伎役者のような勇ましい眉をぴくりと動かす。
「あえ? お客さん、いたの?」
「は、はい。ちょうど今お邪魔しました」
「それはすまねえ。ちょっと今作業をしていたもんで」
表情はむすっとしていて喋り方も決して丁寧とは言わないが、このひとからは不思議と嫌なオーラは感じられない。
「もしかして、あなたが滝川社長ですか?」
昴が一歩踏み込んだ質問をすると、彼は「そうだけど」とぶっきらぼうに答えた。
『滝川工務店』だから、社長の名前が「滝川」であることは簡単に見当がつく。
「こんにちは」
工務店の扉を開けると、雑多な書類や本が積まれた事務所の中に、机に向かって鉛筆で書き物をしている男性が一人、カウンターの奥に座っていた。
短い白髭が生えた顎を触りながら、机と睨めっこしている。私たちがやって来たのも見えていないのか、「あの〜」と私が声を上げたところでようやく顔を上げた。かけていた老眼鏡を外して、歌舞伎役者のような勇ましい眉をぴくりと動かす。
「あえ? お客さん、いたの?」
「は、はい。ちょうど今お邪魔しました」
「それはすまねえ。ちょっと今作業をしていたもんで」
表情はむすっとしていて喋り方も決して丁寧とは言わないが、このひとからは不思議と嫌なオーラは感じられない。
「もしかして、あなたが滝川社長ですか?」
昴が一歩踏み込んだ質問をすると、彼は「そうだけど」とぶっきらぼうに答えた。
『滝川工務店』だから、社長の名前が「滝川」であることは簡単に見当がつく。