きみと、まるはだかの恋
「何の用だね? 新築建築? それともリフォーム?」

「空き家をリフォームしてカフェをつくりたいんです。カフェの中にプラネタリウムを設置できるようにしたいのですが、そういうのも滝川さんにお願いできたりしますか?」

 具体的な仕事の依頼に、滝川さんがグッと昴のほうに身を乗り出した。

「ああ、もちろん。うちは星見里一の工務店だからね。……て、星見里にはうちしか工務店がないんだがな! はっはっは!」

 みかけによらず、おおらかに笑うひとだと分かり、なんとなく安心した。職人気質なひとと話をするのは初めてのことなので、どことなく緊張していたのが、だんだんと解れていく。

「それで、空き家というのはどこの空き家か決まってるのか? リフォームの具体的なイメージは? あ、その前にそこに腰掛けてください。気づかなくてすまない」

 ほれ、と滝川社長が指差したテーブル席についた私たちは、鉛筆とノートを持った滝川社長と対峙する。社長と知ったからか、滲み出るオーラが野生のクマのようで、「おお」と自然とのけ反りそうになるのをなんとか堪えた。

「空き家は、役場の東側にある村長の役場を使って良いとのことなので、そちらを使わせていただくことになりました。外観はこんな感じです」

 昴がここに来る前に事前に撮っていた村長の空き家の写真を滝川社長に見せる。
 そう、昨日の晩、村長に出会った昴は、村長が持っている空き家を譲ってくれないかと交渉していたのだ。説得するのに難航するかと思っていたが、カフェの話をすると、村長は「そういうことならぜひ使ってくれ」と言ってくれた。とんとん拍子に進んでいく話に、私は昴と思わずガッツポーズをした。
< 146 / 186 >

この作品をシェア

pagetop