きみと、まるはだかの恋
「ほう。かなり広い家だな。カフェとしては十分使えそうだ」

 ノートに鉛筆でメモを取りながら、滝川社長は「それで、内装のイメージは?」と追加の質問を投げた。

「実は内装に関してはちょっとまだ決めてかねていまして。相談したいひとがいるので、そのひとに相談した後にまた滝川さんのほうにお伝えするのでもよろしいでしょうか?」

「ああ、いいけど。んじゃ、先にスケジュールのほうを決めるぞ」

 相談したいひと?
 そんな話は聞いていなかったので、私は首を捻る。
 だが、その間にも昴と滝川さんとの間でスケジュールに関する話がどんどん進んでいくので、それ以上考えている場合ではなかった。

 滝川社長との話し合いの結果、十月中に内装などの打ち合わせをして、十一月から施工を始め、十二月までに完成させることになった。
 仕入れ先、メニュー決めやオペレーションの確認、周囲へのPRの期間などをたっぷり二ヶ月間とり、少し暖かくなってきた三月に開店することに決めた。工事が多少遅れても大丈夫なような余裕のあるスケジュールだ。

「……てことで、こんな感じで行きたいんだけど、大丈夫?」

「はい、大丈夫です! よろしくお願いします」

「こちらこそ。なんだか久しぶりに面白い仕事が舞い込んできたな。うちの腕の見せ所だ。よろしく」
 
 ニッと口を大きく開けて笑った滝川社長の歯は驚くほど白かった。
 滝川工務店を後にした私たちは、一時間に及ぶ打ち合わせで凝り固まった身体をぐーっと伸ばす。
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