きみと、まるはだかの恋
 一目見て、確かにおしゃれだなと思った。綺麗めで上品な印象を受ける。
 だが、どこか胸がもやもやとしだす。
 なんだろう。
 このカフェが素敵じゃないわけじゃない。むしろ、代官山のカフェとしてぴったりすぎるぐらいおしゃれで綺麗だ。
 でも……。
 私の胸に渦巻く疑問は、昴も同じだったようで、彼もちょっとだけ表情を曇らせていた。

「あの、重村さん」

 私は、勇気を出して重村さんにこの胸の違和感を伝えることにした。

「とても素敵なカフェなんだけど、私たちの目指す理想の内装とはちょっと違う気がします。都会のカフェとしては最高です。ただ、星見里には合わない気がするんです。もう少しこう、温かみというか、星見里でほっとするような空間にしていんです。難しいでしょうか……?」

 せっかく提案してくれたのに、その意見を否定するようで申し訳ないと思いつつ、それでもきちんと理想のお店をつくるために私たちの想いを伝えた。
 昴も、「そうだな。俺も、同じことを思った」と正直な感想を重村さんに伝える。
 私たちのコメントを聞いた重村さんは、気を悪くするかと思ったが——まったくそんなことはなかった。むしろ、にんまりと笑って「なるほど」と納得する素ぶりで言った。

「それもそうだな。悪い。こちらの意見を押し付けてしまった」

「いえ、そんなことないです! この観葉植物を置いているところとかは、真似したいなと思いました。最初に提案してくださったからこそ、自分たちの理想の方向が固まってきたので、むしろありがとうございます」

「うん、ハナさんは本当に優しいね。ありがとう。じゃあもう少し、この村にふさわしいような内装を一緒に考えよう。城山、よろしく」

「おう」

 私たちは三人で視線を交わし合い、あれこれと意見を言いつつ、星見里に合う内装デザインを考えだした。
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