きみと、まるはだかの恋

第二章 星をかたるひと

『ベストツーリズム』さんと星見里に向かったのは翌週の月曜日、九月八日のことだった。

「あいにくの雨ですねえ」

「本当に。九月って雨多いですよね」

 北村プロデューサーの鈍いため息が、マイクロバスの中に充満する。北村さんのほかに、アシスタントの女性、中井(なかい)さんも一緒だ。ロケの日程は他の仕事との兼ね合いで決められているから、雨予報だと知っていても簡単に変更することはできない。私にも都合があるし。一縷の望みをかけて天気予報が外れることを祈りつつ今日を迎えたが、悲しいかな朝から雨が降っている。しかも局地的なものではなく、全国的に雨模様だった。

「とりあえず、自然の風景は今日撮影しよう。星空に関しては星空ツアーを体験しようと思っていたんだけど、延期になりそうだ」

「分かりました。また日程を組んでくだされば合わせます」

「そう言ってくれてありがたいよ。ハナさんとは今後も長く付き合っていきたいからね」

「ありがとうございます」

 どの会社のひとからも、「ハナさんとはこれからもお付き合いしたい」と言ってもらえている。今のところ自分の市場価値はまだ健在だということだ。
 高速道路を走っていると、東京の街中の風景から山々に囲まれた風景に次第に移り変わっていく。そこからは変わり映えのしない自然の風景がずっと続いた。
 一時間半ほどして、星見里に到着した。意外と近いな、というのが正直な感想だった。
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