きみと、まるはだかの恋
「え、しないの? てっきり俺は結婚するもんだと思って」

「いや、まだ考えてないのであんまりせかさないでって意味だよ」

「そうか、そうか。俺がもしハナさんみたいな美人捕まえたら一生離さないけどね?」

 ニタリと愉しげに笑う重村さんは完全に酔っている。恥ずかしくなった私は俯いて、また食事の続きを始めた。

 “まだ考えてない”か……。
 でもまあ、そうだよね。だって昴とはまだ付き合い始めたばかりだし。結婚なんて一年、二年、と交際を続けてからようやく考え出すものだ。焦ったって仕方がない。
 そう思うのに、胸に小さな棘が刺さったみたいに、その後の時間はなんだか三人の会話に集中することができなかった。
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