きみと、まるはだかの恋
「ぷはーっ、よく飲んだな」

 その日の夜、私は昴とともに中目黒の自宅に帰ってきた。川沿いに聳え立つ高層マンションを目にした昴は口をぽかんと開けて「ははは」と笑い声を上げた。

「波奈、お前すげえな」

 最初は皮肉かと思ったが、マンション内に入ってから「うわ、ホテルみたい!」「廊下が厳か」「エレベーター何台あるん!?」とはしゃぎながら素直に驚く姿を見ると、さっきの言葉は本心だったのだと分かった。

 自宅に帰り着いたらもう二十一時を回っていたので、順番にお風呂に入る。その後、冷蔵庫から適当なお酒を取り出して、「飲む?」と昴に問いかけた。

「ああ、いただきます」

 私たちはリビングのソファに座って飲み直した。普段は昴の部屋でやっていることだけれど、自分の家でとなると、妙に緊張する。
 なんだか同棲してるみたいだな。
 お店で重村さんから結婚の話を聞かれたから、自然と思考がそっちの方向へと持っていかれてしまう。私はグラスに入ったリキュールをほどよく飲みながら、昴の長いまつ毛を見つめた。

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