きみと、まるはだかの恋
「あのさ、波奈」

「へっ」

 突然、あらたまったかのように名前を呼ばれたので、今まさに彼のまつ毛をじっと見つめていた私は驚いてぴょんと飛び跳ねた。

「なんでそんな驚いてんだよ」

「いや……だって急にそんなふうに改まった感じになるから、びっくりして」

「そうか? まあいいや。あの、さっきの話なんだけど」

「さっきの話って?」

 私が問い返すと、昴は鼻の頭を掻きながら、「だから、居酒屋で重村が言ってた……」と照れ臭そうに切り出した。

「結婚のこと?」

「……ああ」

 なんだろう。急に胸がドキドキと音を立て始めた。お酒のせいではない。もしかして今、昴は私にプロポーズしようとしてる? いやいや、そんなはずないじゃん。だってさっきは、考えてないって言ってたし……。
 じゃあ、この胸の高鳴りはなんなんだろう。
 昴の顔をじっと見つめる。濡れたような色気のある彼の瞳が、私の目をまっすぐに見つめた。
< 169 / 186 >

この作品をシェア

pagetop