きみと、まるはだかの恋
「ちゃんと、考えてるから」

「え?」

 目的語がない。“何を”考えているのか一瞬分からずに戸惑ってしまう。が、昴の顔が耳まで真っ赤に染まっていることに気づいて、「あっ」と声を上げる。

「だから、結婚のこと。今すぐは無理かもしれないけど、ちゃんと俺、考えてるから。だから波奈も、考えといてほしい」

 それだけいうと、恥ずかしいのかぷいっと顔を逸らしてまたお酒を飲み始めた。
 
「……」

 もしかして今のって……。

「……プロポーズ?」

 咄嗟に考えていたことが口に出てしまった。昴ははっとまた私のほうを見て、「ち、ちげーよ」と否定した。

「プロポーズはまた別の機会にちゃんとする! だから今のはノーカン!」

「そ、そっか」

 普段は冷静な彼に似合わず、やけに感情的になっているところを見ると、昴の中でも私との結婚を本気で考えてくれていることが分かった。胸がトクトクと激しく動き出す。あふれそうになる情愛をなんとか押し留めようとしたが、だめだった。

「昴……好き」

 昴の首に腕を回して抱きつく。彼は「おわっ」と体勢を崩したけれど、すぐに抱きしめてくれた。
 そのまま私たちはベッドへと進んでいく。
 示し合わせたかのようにお互いを見つめ合い、熱いキスをして、身体を重ね合わせた。
 昴の身体の温もりを感じながら目を閉じる。
 胸に抱えきれんばかりの幸せな気持ちをどうすればいいか分からなくて、必死に彼を抱きしめるしかない。閉じた瞼の向こうには、星見里で見た煌々と輝く星空が広がっていた。

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