きみと、まるはだかの恋
「せっかくなら、私たちらしい名前がいいよね。二人で頑張ってきたんだもん。この先もできるだけ長くカフェを続けられるように、愛着が湧く名前にしたい」

「そうだな。波奈と俺……共通しているのは町田出身ってことか?」

「ぷっ」

 昴の口から町田という地名が出てきて思わず吹き出した。

「なんで笑うんだよ」

「いやだって……町田を店名に入れるのは無理でしょ〜」

「連想ゲームをしようとしただけだっ」

「そっかそっか。でも町田は確かに私たちの原点だね。今思えば、町田の星空も綺麗だったのかも」

「あの頃はちゃんと空を見上げようって考えなかったからな」

「自然豊かなところも多かったのにね。あ——」
 
 町田での暮らしに想いを馳せて懐かしい気分に浸っていると、突然頭に一つのインスピレーションが降ってきた。

「どうした?」

 昴が私の顔を覗き込む。彼の後ろの床に置かれた、もさもさと伸びるガジュマルの木が、聞き耳を立てているように感じられた。
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