きみと、まるはだかの恋
「いよいよ来週、オープンだね。二人で頑張ろう」

「ああ」

 私は、昴と共に店全体が映るように、スマホでパシャリとツーショットを撮った。それから、すぐさま店のWi-Fiを使ってインスタに写真を投稿する。

【2/21 ついに店の名前が決定しました👏
店名は……『Dining Café 花と星』です!
私の“ハナ”と、店長・城山昴の名前から“星”をとりました。
オープンは三月一日日曜日です。
ぜひ遊びに来てください〜✨】

 写真つきの投稿はすぐさま「いいね」がついて、コメント欄も温かい声で埋まっていく。

【いい名前ですね。絶対行きます】

 そう宣言してくれるファンの声を昴に見せる。
 
「嬉しいこと言ってくれるじゃん。波奈のファンって、あったかいひとばかりだな」

「対象の私があったかいひとだからね?」

「はは、確かにそうだ。あったかいわ」

 そう言いながら昴が私をぎゅっと抱きしめる。
 ちょ、ちょっと、「温かい」ってもしかして体温のこと?
 ……なんて、照れ隠しで心の中でつっこみを入れる。
 素直じゃない昴も、私の仕事のことを本気で心配してくれる昴も、私を大切にしてくれる昴も、全部ひっくるめて好きだ。

 昴の匂いを感じながら、お店の窓の外に見える田舎の冬景色を記憶に刻みつける。初めて訪れた時は秋だったのに、もう冬が終わり、春が来ようとしている。どの季節、どの瞬間も、星見里の風景は都会で疲れた私の心を癒してくれた。これからはここで、温かいご飯とともに、訪れたひとたちの心に灯火をつけよう。
 ひそかに胸に誓うのだった。
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