きみと、まるはだかの恋

エピローグ

美空(みそら)〜三番テーブルさんに“田中さん家のピーマン肉詰め定食”、運んで〜」

「はあい」

 トコトコという小さな足音と共に、ポニーテールの小さな美空が厨房まで駆けてきた。私は、小学一年生の美空の手にお盆を持たせて、「お願いね」と小さく微笑む。
 お店を手伝い始めた頃はちょっと不安に思いもしたけれど、半年も経つと堂々と料理を運ぶことができるようになった。たくましい後ろ姿に感心しつつ、「おまたせしましたー」とお客様のもとに無事料理を運び終えたのが分かるとほっとした。

「美空は大丈夫か?」

「うん。今日も元気に運んでくれてる」

「それなら良かった」

『Dining café花と星』をオープンしたあの日から十年の月日が流れた。
 あの日から一年後に結婚した私たち。バラの花束を持ってポロポーズしてくれた時は最高潮に胸が高鳴って、心底嬉しかった。
 私、昴と結婚できるんだ。
 高校時代、ずっと片想いだと思っていた相手と。
 なんだかすごく不思議な気分だったけれど、感極まって「うん!」と昴に抱きついた時、大好きな昴の匂いが全身を包み込んでくれて、絶大な安心感を覚えた。

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