きみと、まるはだかの恋
 メニュー表を開いて、とりあえず食事一覧に目を通す。喫茶店なので食べるものがないかもしれないと少し不安だったが、サンドイッチやおにぎり、デザートはひと通り揃っていた。本当はもっとボリュームのあるものを胃に納めたいけれど、背に腹は変えられない。私は、「おにぎりセット」とホットコーヒーを注文した。組み合わせ的にどうなのというツッコミは受け付けない。コーヒーは食後に持ってきてくれることになった。

「お待たせしました。『おにぎりセット』です」

 差し出されたお皿にちょこんと乗せられた二つのおにぎりは出来立てのようで、ほくほくと湯気がたちのぼっていた。海苔はおにぎりの下に敷いてあって、自分で巻くスタイルらしい。お皿の端の方にたくあんと、柚子胡椒がこんもり乗っている。たくあんは分かるけれど、柚子胡椒がついてくるのは新鮮だった。

「いただきます」

 艶々のお米を見て、もう我慢することはできなかった。
 添えられていた海苔でおにぎりを綺麗に包み込むと、豪快にぱくりとかぶりついた。
 アツアツほくほくのお米が口の中にぎゅうぎゅうに押し込まれる。絶妙に塩気が効いていて、やわらかさも私好み。パリッと小気味よい音を立てた海苔からは新鮮な匂いが漂う。むしゃむしゃと咀嚼して飲み込むと、たった一口だけなのに異常なほどに満たされた気分になった。そのまま、我を忘れて掻き込むようにして残りのおにぎりを食べる。甘い昆布の佃煮が入っていて、それもまた美味しかった。二つ目のおにぎりも勢いよく食べ尽くした私は、お腹をさすりながらはっと我に返る。店員さんが、にこにこと微笑みながらこちらを眺めていたのだ。

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