きみと、まるはだかの恋
「波奈が戻ってきてくれただけで、なんか嬉しいし」

 なんで? と聞き返したかった。だけど、喉元まで出かかった言葉を必死に飲み込む。
 あれ、私……どうしちゃったんだろう。
 心臓がかつてないほど激しく鳴っている。手先から足先までたっぷりと血液が巡っていて、身体の熱がどんどん高まっていく。
 照れた笑みを浮かべる昴に、そんなふうに言われて、嬉しくないはずがない。
 だって彼は私の——初恋のひとなんだから。
 今がどうとか、関係がなかった。
 私はこのひとのことが間違いなく好きだった。
 そして、うまく昇華されなかった想いを抱えたまま生きてきた。見えないふりをしていたけれど、彼への気持ちはたぶんずっと胸の中に眠っていた。このまま見て見ぬふりをして誰かと幸せになることだってできたはずなのに、いざ再会するとまた動き出してしまったのだ。
 彼のたったひとことに、こんなにも心が乱される。もう、やめてほしい。昴、あなたは私にとって過去のひとだったのに。
 もう過去に押しやれない。
 だってまた、出会ってしまったのだ。
 この小さな村で、約束もなく、再会してしまった。
 これを運命と呼ぶなら、きっとこれから先、私の人生の中でこれ以上の“運命”は訪れないだろう。

 自分の中で、波が荒ぶるようにどんどん変わっていく気持ちを感じながら昴の顔をじっと見つめる。彼のほうは不意に本音がこぼれ落ちてしまったというふうに、彼が「いや、今のは」と再び鼻の頭を掻く。今度はしっかりと掻く。おかげで鼻がほんのり赤くなっていて、ちょっと痛そうだった。
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