きみと、まるはだかの恋
「ごゆっくりどうぞ」

 語尾に「♡」でもつきそうな勢いで、彼女は再び微笑む。
 昴の手元からコーヒーの香りが漂ってきて、なんだか苦い気持ちにさせられた。

「波奈、今日は日帰りなの?」

 私の鞄を見ながら昴が尋ねる。

「その予定だったんだけど、帰りのバスを予約しようとしたらネットが繋がらなくて……」

「ああ、なるほどね。ネットが繋がる場所、限られてるからなー。あのさ、帰りのバスなら俺がなんとかするから、その前に星空ツアーに参加しない?」

「は?」

 私は帰りのバスのことを心配していたのに、昴の口から出てきたのは、バスとはまったく関係のないワードだった。
 星空ツアーって、確か以前来た時に北村さんたちと参加する予定だったイベントだよね。なんで昴が私を星空ツアーに誘うの? 
 気づかないうちに眉間に皺が寄っていたからだろうか。昴が、「ああ、ごめんごめん」と両手を軽くひらひらと振った。

「言ってなかったけ。俺、星空ツアーのツアーコンダクターをしてるんだ」

「つあーこんだくたー?」

 知っている。あれでしょ、ツアーガイドさんのことでしょ。うん、それぐらいは分かる。でも、なぜ昴がそんなことをしているのかが分からないのだ。
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